※このページでは“法務×DX”の新しい潮流「リーガルテック」について詳しく解説します
法務部にDXはムリ…
と感じていませんか?
DX(=デジタルトランスフォーメーション)が浸透するなかで「総務・経理・人事」など会社のさまざまな部門で「業務のデジタル化」が進んでいます
確かに、法務はDXと“相性”が良くない部門です
- 紙の契約書が多い
- 社外秘の情報を扱う
- ノウハウが個人に溜まりがち などなど
では「このまま法務部はずっとアナログ」で良いのでしょうか?
そんなことはありません
この記事では【法務×DX】の新しい潮流「リーガルテック」について、現役のDX人材が専門用語抜きで分かりやすく解説します
法律リスクから会社を守りつつ、法務のDXを達成しましょう!
リーガルテックとは「法務×IT」の新しいサービス!
リーガルテック(LegalTech)とは「法律」を意味する“Legal”と「テクノロジー」の“Technology”が結び付いた言葉です
その意味は次のとおりです
もともとは“訴訟大国”アメリカで2000年代にスタートしたサービスです
日本でも2016年ごろから様々なスタートアップ企業が設立されました
下の表のとおり、国内のリーガルテック市場は急拡大しています
【法務担当は忙しい】だからこそITの支援が必要!
ひとことで「法務」といっても、その業務内容は多岐に渡ります
- 契約文書のリーガルチェック
- コンプライアンス対応
- 特許権などの知的財産の管理
- 訴訟案件対応 など
法務部って忙しい…
さらに法務担当者は、常に最新の知識をアップデートしなければなりません
- 法律が改正された
- 裁判所の新しい判例が出た
- コンプライアンスが厳しくなった など
昨日までの常識が通用しなくなった!となるケースも多々あります
法務担当者は多忙です!
リーガルテック|5つの種類
「リーガルテック」といわれるITサービスにもさまざまな種類があります。主なものをいくつか紹介しますので、参考にしてください
1.契約書レビュー機能
Googleで「リーガルテック」と検索すると、まずヒットするのがこの機能です。
テレビCMもたくさん流れていますので、見られたことがあるかもしれません
これは契約書に潜む“リスク”をAIが判断してくれる機能です
「業務委託」でも「物品の購入」でも新たな契約を締結するときは何らかの“契約書”を用意しますね
もし、その“契約書”に不備があったらどうしましょう?
素人がさっと読むだけでは分かりません
そんなときに「AI」が頼りになります
「AI」の“脳内”には弁護士が作成した膨大な契約書データ(=正解データ)が記憶されています
その「正解データ」と、新しい契約書を比較して、”リスク箇所”や”抜け条項”を指摘してくれる機能が「契約レビュー」機能です
「契約書レビュー」機能は”停滞期”⁉
ここでは、契約書レビュー機能の課題点について”深堀り”していきます
一見とても便利な契約レビュー機能ですが、リーガルテックのなかでは“停滞期”に差し掛かっている分野です
その主な理由は2つ
- AIといえど正確なレビューは難しい
- 弁護士法72条のグレーゾーンに触れる
【AIレビュー機能が停滞する理由①】AIでも正確なレビューは難しい
言うまでもなく、契約文書の“リスクチェック”は人間でも高度な知識を持っていないと難しい仕事です
AIなんだからそんな高度な仕事も得意では?
と思うかもしれません
しかし、契約書レビュー機能を利用する多くの人はその“逆”のことを感じています
つまり「AIもまだまだ人には追い付けない…」ということ
わたしも業務で複数の「契約レビュー」システムをトライアルしましたが、結果は厳しいものでした
トライアルの詳しい内容は別の記事に載せますので、そちらもご覧ください
参考記事:【本当に使える?】AIレビューの”リアルな実力”
わたしが試したのは日本語のシステムでしたが、
リーガルテックの進んだアメリカ(英語)では、すでに「幻滅期」に入ったと言われるほど期待した成果が出ていないのが現状です
【AIレビュー機能が停滞する理由②】弁護士法72条のカベ
リーガルテックの「契約書レビュー」機能を停滞させるもう一つの要因が「弁護士法72条」のカベです
弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
e-Gov 法令検索より引用
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
要約すると「弁護士以外の者が法的なアドバイスを行う業務をしてはいけない」というものです
システムベンダーも各社も、さまざまな理由を挙げて「違法ではない」旨を説明していますが、現状のところ政府の見解は変わっていません
最新の見解が政府サイトに掲載されていますので、深く知りたい方はご一読下さい
経済産業省サイト グレーゾーン解消精度の活用事例 法務省解答
2.契約編集支援
法務担当者が契約書のチェックをするとき、法律的リスク「以外」にも確認しないといけない箇所があります
- 誤字、脱字はないか?
- 表記ゆれはないか?(例:「及び」と「および」が混在していないか?)
- 自社で過去に同じような契約を結んでいないか?などなど…
すべてをチェックするのは大変ですよね?
「編集支援」機能では、人に代わって「AI」がこういった契約書の走査業務をサポートしてくれます
【Point】
ここでは「AI」は“法律的なアドバイス”はしません
あくまで文書の「編集」をサポートすることに特化しているので、先ほどのような「弁護士法のカベ」にも阻まれません
先ほどの「①契約書レビュー」機能との見分け方として、「弁護士を雇うか」「法務アシスタントを雇うか」の違いと考えると分かりやすいです
①契約書レビュー | ②文書の編集支援 | |
---|---|---|
導入のイメージ | 弁護士を雇う | アシスタントを雇う |
できること | 法的なアドバイス | 編集のお手伝い |
弁護士法72条のカベ | あり | なし |
3.文書の保管機能
前述の2つは契約書を「作る」段階で役に立つシステムでしたが、ここでは締結済み契約書の「保管」に関する機能を紹介します
オフィスのなかでこんな”悩み”に会うことはありませんか?
- 契約書を「紙」ベースで保管しているせいで、すぐにキャビネットが満杯になって保管場所に困ってしまう
- PDFやWordなどの電子データで保管していても、共有サーバーに“無秩序”に放り込まれているだけで誰も整理していない
そんな課題をデジタル技術で解決するのが「文書の保管機能」です
なかには「AI」を活用して、データをシステムに”アップロード”するだけで勝手に管理台帳を作ってくれるサービスも続々と登場しています
電子帳簿保存法の改正と相まって、急速に需要が高まっている機能です!
4.電子署名サービス
契約交渉や社内調整も終わると、いよいよ契約締結です!
今までであれば、契約書を取り交わすときは“書面”にサインまたは捺印をして、契約先に返送することが当たり前でしたね
インターネット上の「暗号化技術」を使うことで、押印やサインがなくても契約書が「改ざんのない原本」であることを証明します
この「電子署名サービス」ですが”単独”で利用されることはあまり多くありません
前章で紹介した「②契約書の編集支援」や「③文書の保管」サービスとセットになって利用されることがほとんどです
この組み合わせで契約の締結に関するすべてのフローを”ペーパレス”で進めることができます
5.その他のリーガルテック
「リーガルテック」の代表的なサービスとして、4つの機能を紹介してきました
ここの章では、法務に”特化”しているわけではありませんが、広い意味での「リーガルテック」の一つとして挙げられている機能をいくつか紹介します
①翻訳機能
契約書がいつも「日本語」とは限りません
海外の企業と契約を結ぶならば「英語や中国語で何が書かれているか?」の確認は必須です!
あいまいな箇所を残したままサインてしまっては大変です
”Google Translate”や”Deep L”などの翻訳ツールも広い意味での「リーガルテック」の一部として活用されています
②受付け機能
この契約書、誰にチェックしてもらえばいいんだろう??
法務担当者に契約書の”作成”や”チェック”を依頼するとき、あなたの会社ではどうしていますか?
担当者の名前が分かっていれば”Eメール”や”口頭”で依頼するかもしれません
しかし、会社の規模が大きくなって法務担当が複数人いる場合は”Microsoft Forms”や”メーリングリスト”を使って依頼を受け付けていると思います
契約業務の“スタート地点”にあたる受付機能も「リーガルテック」の一つのシステムです
③案件管理の機能
案件のステータスを“見える化”する機能です
法務担当者は日々、たくさんの契約書チェックに追われています
時には「この案件は誰かがもう対応しているだろう」と思い込んでしまい、知らないうちに業務を止めてしまっていることもあります
- チェックを依頼した部門は「法務がまだチェック中」と思っている
- 法務部門は「依頼部門に返答済み」と思っている
お互いに「ボールは相手が持っている」という思い込みがありますね
業務のフロー(依頼>確認>修正>再依頼>承認など)を電子上で“見える化”すれば、この案件は誰が作業中か?を明らかにすることができます
まとめ
改めて”おさらい”します
さらに、契約書だけでなく、
- 社内向けの例規・規則集や、
- 社外向けの開示資料の作成や管理など
文書に関する多彩な業務カバーしたシステムもたくさん登場しています
企業として活動していくには必ず「法律」が関わってきます
最新のデジタル技術を上手に活用して、会社を”法務リスク”から守りましょう!