DX(=デジタルトランスフォーメーション)に取り組むなかで、次のような「不安」を感じることはありませんか?
- 当社のDXは順調なのか?
- 人とカネを投資して、失敗したらどうしよう?
- なぜウチのDXだけ上手くいかないのか?
2022年1月の調査によると「全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は全体の59%にのぼる一方で「十分に成果が出ている」と答えた企業は10%しかありません
さらに30%は「あまり成果が出ていない」「まったく成果がない」と回答しています
なんとか失敗だけは避けたい
こう思うのは当然のことです
そこでこの記事では、関西の上場企業でDXを担当しているわたしが「当てはまると要注意なDXの“黄色信号“とその対処法」を解説します
この記事を読めば、人材・お金・時間をムダにせずDXを達成するにはどうすれば良いか?が分かりますよ
早速見てみましょう!
いくつ当てはまる?DXを失敗させる7つのサイン
この記事ではDXの”失敗”につながってしまう黄色信号を7つにまとめました
まずは、あなたの会社が次の「7つ」のうちいくつ当てはまるか?カウントしてみてください
- 社長が最近「DX」「デジタル」を言わなくなった
- DX担当チームのメンバーがプロパー人材ばかり
- DXチームの仕事の大半が既存のシステムの管理
- 「DXで実現したいこと」が誰も説明できない
- DXに派手な結果ばかりを求めがち
- デジタル化=DXと思っている
- システムは最初から「新規開発」が前提
結果はどうでしたか?
いくつ当てはまったか?を下の表と比べてみてください
1つも当てはまらない | Very Good! このまま進めばDX達成は目の前! |
1・2個当てはまる | まだ大丈夫。将来苦労しないために、早めに課題を解決しておこう |
3・4個当てはまる | 危険水域。ドロ沼にはまってしまう前に脱出しよう |
5個以上が当てはまる | 重症かも… 赤信号になってみんな停止してしまう前に対策を! |
次の章では、ひとつひとつについて「なぜそれが危ないか?」を解説します
黄色信号①:社長が最近「DX」「デジタル」を言わなくなった
DXの成功には経営トップの“コミットメント”が欠かせません
DXは経営層が「旗」を振らねばならない全社的な課題だからです
だからこそ、経営層が次のような調子ではDXは上手くいかないでしょう
- 計画立案のときだけ前のめりになる
- 実施は担当部門に任せきり
- 年初スピーチの時だけ思い出したように「DX推進」に言及する
DXが進むと従来の“仕事のスタイル”が大きく変わります
突然の変化に「抵抗勢力」が現れることも少なくありません
- 今までのやり方を変えるなんて嫌だ
- 会社の文化的にデジタルは合わない
- なぜいまDXが必要なんだ?
こんな「声」は担当者レベルでは抑えきれません
「会社のために多少の痛みを伴っても前進する」というトップの強い意思表示がなければ、DXは中途半端に終わってしまいます
黄色信号②:DX担当チームのメンバーがプロパー人材ばかり
DXの専門チームを設けても、メンバー全員がプロパー社員(=新卒で入社した人材)では上手くいきません
プロパー社員で固めてしまうと、自社の「社風」や「文化」だけが判断基準になってしまい、外部の意見を積極的に取り入れることができないからです
特にDXチームのメンバー構成が次のような場合は要注意!
社外に「魅力的な成功事例」があっても、気づけない可能性が高いです
- プロパー社員のみ
- 同年代ばかり(特に若い世代ばかり)
- 男性だけ
以前わたしが勤めていた会社は「自力で解決する人こそ偉い」という社風がありました
DXチームのメンバー(4人・全員がプロパー社員)にも「自力本願」の社風が染みついています
当然、新しいシステムを導入するときも「自力で」「ゼロから開発」することが前提になりました(すこし探せば「安価で」「使いやすくて」かつ「すぐ導入できる」既存サービスがあるにも関わらず、、、)
黄色信号③:DX担当チームの仕事の大半が既存のシステムの維持
DXを担当するチームの業務が「既存システムの維持・管理」になっている場合も、その組織のDXは絶対に成功しません
これも、理由は先ほどと同じです
DX成功のヒントは「社外」にあります
それにもかかわらず、既存システム維持が仕事になると「社内」にしか視線が向きません
DXはデジタル技術の力を使って組織の課題を解決することです
そして、課題解決のヒントは99%以上が「社外」で見つかります
- 展示会
- 業界誌の記事
- 他社のDX人材との意見交換
- DX関連サイト
会社によっては、同じような課題でも全く違うアプローチで解決していることも珍しくないです
そんな”好事例”は自社のサーバー室に籠っているだけで絶対に出会えません
黄色信号④:「DXで実現したいこと」が誰も説明できない
- DXの結果、どんな目標を達成したいか?
- 1年後にはどんな面倒ごとが無くなっているか?
この質問に答えられないと、DXの成功はありません
何ごとも「目的」と「手段」が区別できなければ失敗します
冒頭の質問に答えられない人は「何のためにDXをするのか?」が曖昧になっています
まずは「何を作るか?」を決めるはずです
DXに失敗したくなければ1年後の姿(こうありたいorありたくない)をイメージしてください
ありたい姿を考えるときは、響きの良い“バズワード”は必要ありません
大事なのは「達成を計測できる目標を立てる」ことです
- お客様満足の向上 → 商品の不良率を○%以下にする
- 残業時間を減らす → 面倒なExcel作業を○件削減する
- コスト削減 → 紙伝票を廃止してコピー代を○円削減
黄色信号⑤:DXに派手な結果ばかりを求めがち
DXで目指したい姿が「ない」のも問題ですが「派手すぎる」のも要注意です
他社のDX事例を調べてみると、うらやましくなるほど「派手」な成功事例ばかりが目につくことはありませんか?
- AIで顧客の好みを分析して売上を倍増させた
- RPA(※コンピュータを用いた事務作業の自動化)で面倒な事務作業がすべてなくなった
- 最新のセンサーのおかげで検査にかかる時間が大幅に減った
夢がありますよね
こんな“キラキラした成果”を目指してDXに取り組むこと自体は悪いことではありません
例えば「AIを使って売り上げを増やす」という目標だけを追いかけていると、どんなことが起こるでしょうか?
とりあえずAI業者と契約したけれど、社内のどんなデータをAI分析にかければよいかが分からない。
いつまでも「検証作業」ばかり繰り返している、なんてことにも…
DXは一直線の短距離走ではありません
むしろ障害物競走のように、目の前の課題を1ずつクリアしながらゴールに少しずつ近づいていきます
先ほどのケースでいうならば、AI業者と契約を結ぶ前に「どんなデータを整えなければいけないか?」を明らかにしておかなければなりません
黄色信号⑥:デジタル化=DXと思っている(全然ちがいます)
DXのことを「デジタル化すること」と考えているならば、それは間違いです
この2つは明確に異なります
デジタル化 | 既存の業務プロセスをIT・デジタルツールに置き換えること |
DX | デジタル技術を上手に活用して、働き方を変えたり、企業の価値を高めたりすること |
デジタル化はDXを達成するための1ステップにすぎません
DXの達成のためには「乗り越えるべき2つのステップ」があります
普段わたしたちが使う「デジタル化」はそのSTEP1:デジタイゼーションを指していることがほとんどです
詳細はこちら → DXを阻む2つのかべ:デジタイゼーションとデジタライゼーション
DX=デジタル化と認識している人は、上記の3つは”違う”ことをまず理解してください
黄色信号⑦:システムは最初から「新規開発」が前提
新しいシステム(またはソフトウェア)を導入するには、大きく2つの方法があります
- イチから新規開発する
- 既存のシステム(パッケージ)を購入する
システム検討の段階から「1.新規で開発する」ことを前提にしているとDXは失敗します
わたしは今まで多くの会社のDX事例を見てきましたが、これは断言できます
「既存システムの購入」と比較して「新規開発」にはいくつか弱点があります
- 開発コストがかかる
- 開発期間が数か月から年単位かかる
- システムがベンダーの”ブラックボックス”になりがち
コストや時間も重要ですが、実は3つ目のブラックボックスが最も厄介です
新規でシステム開発となると、ほとんどの会社は専門のシステムベンダーに外注することになります(自社に開発できる人材がいれば別ですが)
すると、システムの設計、導入時のサポート、カスタマイズ、緊急時対応まですべてがこのベンダーに「依存」せざるを得なくなります
自社のシステムが人質に差し出しているのと同じですから
わたしが以前勤めていた会社はこのパターンでした
基幹システムの開発を専門ベンダーに依存してしまったためにシステムがブラックボックス化…
彼らでなければシステムを触ることすらできず、月間数百万円のメンテナンス費を「言い値」で支払わざるを得なくなってしまいました…
まとめ│DXの目的化こそ最大の失敗要因
この記事では「当てはまると要注意なDXの黄信号」を7つ紹介しました
7つなんて多い!どれか1つに絞るならどれ?
そう思う人のために、DX失敗の最大要因を挙げると「DXが目的化すること」です
「DXすれば上手くいく」この考えが失敗の一番の原因です
わたしは、DXってなにと聞かれるたびに「デジタル技術を使って組織の課題を解決すること」と答えるようにしています。
こういった課題を解決することが「目的」であって、DXはそのための「手段」でしかありません
DXに失敗したくないなら「自社の課題はなに?」を”頭から煙が出るくらい”深く考えてください
ここまで読んでいただき、ありがとうございました